インクルーシブデザインワークショップ:”ために”から”ともに”へ向かうデザイン 実践報告

: Posted by Yuki Anzai at February 11, 2012

2月6日「インクルーシブデザインワークショップ:”ために”から”ともに”へ向かうデザイン」が終了しました。

 

 

そもそも「インクルーシブデザイン」とは、高齢者や障害のある人など、特別なニーズを抱えるユーザがデザインプロセスに参加することでイノベーションを目指すデザイン手法であり、現在注目を集めています。

 

今回は、インクルーシブデザインのプロセスを体験的に学ぶため、コミュニケーションデザインの専門家である京都大学の塩瀬隆之先生をファシリテーターとしてお招きし、また「リードユーザー」として5名の全盲の方にご参加頂きながらワークショップを行いました。

 

 

今回扱った題材は「絆創膏」です。絆創膏は怪我をした時に何気なく使っている日常的な製品ですが、よくよく考えてみると、目の見えない人にとって必ずしも使いやすいようにはデザインされていません。

 

 

そこで、実際にリードユーザーの皆さんが「絆創膏を箱から出し、傷口に貼る」までの一連のプロセスを観察しながら、「絆創膏を貼る」という行為に関わる様々な問題点を洗い出しました。例えば、そもそもどの箱が絆創膏の箱かわからない(お菓子と区別がつかない)、箱の上下がわからない、包装をどこから破れば良いかわからない、ガーゼの中心を傷口の位置にうまく当てられない、などなど、今まで気付かなかった様々な問題が見えてきました。

 

 

そこで得た気付きをベースにしながら、これらの問題を改善する絆創膏のアイデアを考えていきます。ここで重要な点は、ただ単に目の見えない人の「ための」絆創膏を考えるのではなく、目の見えない人以外もよりハッピーになれるアイデアを目指すという姿勢なのだそうです。そうした考え方を繰り返し意識しながら、「新しい絆創膏」のアイデアを練り上げていきます。

 

 

こうして出来上がった新たな絆創膏のプロトタイプはどれも魅力的で、健常者にとっても、例えば利き手を怪我してしまった場合や、子どもが使う場面などで有用性の高いアイデアに感じられました。

 

 

僕はインクルーシブデザインの専門家ではありませんが、今回のワークショップは「コラボレーションと創造性」の観点からも非常に興味深い実践でした。「見える人」と「見えない人」という”当たり前”の前提が異なる人たち同士が意見を共有し、アイデアを重ねることで、お互いにとって新奇なアイデアにつながっていくプロセスはとても創造的でした。

 

ただ、同時にとても難易度の高い実践だとも感じました。今回のワークショップでも、やはり前半の段階では、リードユーザーを過剰に支援しすぎてしまったり、伝わらない「こそあど言葉」を多用してしまったりと、接し慣れていないがゆえのコミュニケーションの問題が起きていました。ところが、イントロやアイスブレイク、ファシリテーション、段階的なプログラム構成など、塩瀬先生による様々な工夫や仕掛けによって、「齟齬」が見事に「創造性」へと転換されており、まさに「”ために”から”ともに”へ」がデザインされていると感じました。

 

※本ワークショップはデータ分析を行い、「安斎勇樹・塩瀬隆之・山田小百合・水町衣里(2013)インクルーシブデザインワークショップにおける共感的理解を促すアイスブレイク手法の提案」として日本教育工学会雑誌に掲載されました。


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