「悪い問い」の効用

: Posted by Yuki Anzai at January 3, 2016

これまで述べ250名を超える方々に「問いのデザイン」に関する研究会にご参加いただき、議論を重ねてきました。「ワークショップにおける”良い問い”とはどのような問いだろうか?」という素朴な問いから、参加者の皆さんにそれぞれが考える「ワークショップにおける良い問いの条件」「悪い条件」について尋ね、ひとつずつ付箋紙に書き出してもらうワークを続けてきました。

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良い問いの条件には、「わかりやすい」「シンプル」「正解がない」「ポジティブ」「考えていて楽しい」「五感を刺激する」「それまで考えたことがなかったもの」など、さまざまな条件が並びます。悪い問いの条件には、「わかりにくい」「複雑」「YES/NOで答えられる」「誘導的」「ネガティブ」「考えていて不快」「自分ごとに感じられない」など、こちらも負けずにたくさんの条件がでてきます。これはほんの一例ですが、さすがに現場の実体験から浮かびあがってきた条件だけあって、たしかに納得のいく指針たちが、何十、何百、と挙がっていきます。ところが興味深いことに、これらの条件を見くらべながら議論をもう一段階深めていくと、かならずファシリテーター同士で意見が割れはじめ、討論に発展するケースが出てくるのです。

 

「多少の誤解を生む”わかりにくい問い”のほうが、かえっていろいろな発想が生まれるのではないか?」

「YES/NOで答えられる簡単な問いは、ワークショップの導入で参加者の興味を引くときには使いやすいのではないか?」

「参加者が不快に感じる問いは、何らかの本質を突いている場合が多く、かえって参加者に深い思考を促す場合もあるのでは?」

 

といった具合です。挙句の果てには「ファシリテーターがあまりに”的外れな問い”を投げかけてしまったために、参加者が腹を立てて自発的に本質的な議論をしはじめた!」などといったエピソードまで披露され、どうやら「問いの良し悪し」を参加者や実践者の「主観」だけで評価しないほうがよさそうであることがわかります。

 

ワークショップの文脈からは少し離れますが、日本科学未来館をフィールドにした、科学コミュニケーションに関する調査(城ほか 2015)が、興味深い結果を報告しています。日本科学未来館では、科学者と一般市民をつなぐ役割として「科学コミュニケーター」が雇用され、来館者に対して展示に関する解説や実演などのサポートを行っています。当然、コミュニケーターの関わり方にはさまざまなノウハウがあるはずです。科学コミュニケーターの研修では、来館者に向かって「○○って知ってる?」と、知識の有無を問うことは、来館者の無知をさらけだす可能性があるため、「悪い問い」としてタブー視されているそうです。

 

ところが、城らの調査によれば、「○○って知ってる?」という問いは、むしろ現場では頻繁に活用されており、科学コミュニケーターと来館者の対話を促進させる一定の効果を持っていることが明らかにされています。科学コミュニケーターは、この問いを、いわば「ジャブ」のように使ってあえて来館者の知識や関心の領域に踏み込み、そこで知識や経験の程度をモニターすることで、適切な対話を展開するための手がかりにしていたそうなのです。”悪い”とされる問いも、そこで完結せずに「伏線」や「触媒」として活用することで、効果的に機能することがあるのです。

 

今年に出版予定の書籍『問いをデザインする』では、実践者や参加者の主観にたよらずに、問いによって達成できる目標を類型化し、それぞれに合わせた効果的なデザインパターンを整理することで、ある程度のロジックを持って問いを構成できる指針を紹介できればと考えています。1月23日(土)の研究会でも、こうしたテーマに踏み込んで議論が進められればと考えています。引き続き、執筆頑張ります…!

 

▽参加者募集中の研究会・ワークショップ

2016年2月13日(土)「ワークショップデザイン入門-遊びのテクノロジーを活かした場作り」

http://peatix.com/event/138732/

 

2016年2月20日(土)「問いをデザインする技法を探る-ワークショップにおける”良い問い”とは何か?」

http://peatix.com/event/147236/

 

▽ワークショップを科学する(Facebookページ)

ワークショップをはじめとする「創造的な学びの場作り」の方法について探求するためのページです。研究の進捗と成果、関連するエッセイ、公開研究会などの情報についてお知らせしています。

https://www.facebook.com/BaDesignLab


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