ファシリテーターの時間認識とデザイン感覚

: Posted by Yuki Anzai at May 14, 2017

数年前に比べて企業内でもワークショップを実践する人が増え、大学だけでなく、社内研修としてワークショップデザインやファシリテーションを教えさせていただく機会が増えてきました。経験年数の少ない初心者に共通して教えにくいと感じる項目の一つに「時間の認識」があります。言い換えれば「貴重な時間を大切に使う」という意識が薄く、プログラム設計上、もったいない時間の使い方をしてしまうのです。

これは、限られた時間で何ができるのか、バリエーションのストック不足ともいえるでしょう。たとえば、4-5名程度のグループのアイスブレイクをする際に、5分あれば、名前・所属・参加動機程度の簡単な自己紹介タイムを設けることができます。15分あれば、お題を設けて5分程度で自己紹介シートを作成してもらい、10分かけて共有してもらえばより深まりのある自己紹介ができます。20分とれるのであれば、もう少し凝ったやり方で「あなたの仕事は、誰にどんな価値を届けていますか?LEGOで表現してください」といった活動も可能です。LEGO制作は時間がかかりそうに思えますが、意外と8分程度でも以下のようなものが作成できます。残りの12分程度で共有してもらえば、20分におさまります。逆に、単なる自己紹介だけに30分もかけると、やや冗長になってしまうでしょう。

 

 

といった具合に、5分でできること、15分でできること、30分でできること、3時間なければできないことは、それぞれ異なります。熟練者は様々な条件のもとでデザインをしてきた経験から、2時間のワークショップと1時間半のワークショップでは、できることがかなり異なることを痛感しているので、「30分間」を大切に使います。ところが、初心者は30分でもできる活動に、無頓着に60分かけてしまうのです。

 

半日、終日、数日間のおおがかりなワークショップをデザインする場合には、特にこのことは意識しなければなりません。参加者の貴重な時間をいただくからには、相応の時間をかけるからこそできる、深まりのある内容を目指さなくてはなりません。大学生向けのワークショップデザイン勉強会「FLEDGE」では、半年間のプログラムのうち、前半で「1時間弱」程度の極端なミニワークショップをデザインしてもらい、後半では「3〜4時間」のしっかりとしたワークショップをデザインしてもらうようにしています。前者であれば、ちょっとした問いやワンアイデアがあれば盛り上げることができますが、後者はある程度の深い問いの設定や、問いを深めるための戦略的な活動の構成が必要になります。

 

デザインの時間感覚を養うためには、「本当にそれだけの時間をかける価値があるデザインになっているか?」ということを常に意識しながら、多様な時間スケールでのデザイン経験を積むこと、また他事例を時間の観点からレビューすることが有効だと感じます。たとえば大学の授業をフィールドしていると、デザイン感覚が「90分1コマ」に閉じてしまいます。長期にわたるプロジェクトの場合は、対面のワークショップ以外の時間の使い方(たとえば、オンラインのコミュニティデザインなど)も重要になりそうです。時間のデザインという観点から、改めてワークショップデザインやファシリテーションを整理してみようと思います。

 

 

▼【参加者募集】ワークショップデザイン入門:スキルアップトレーニング(2017年6月24日)

ワークショップのエッセンスと理論について学び、演習を繰り返すことでデザインスキルをトレーニングするためのプログラムです。これから学びの場作りをはじめたい方も、日々の実践で悩まれているファシリテーターの方も、お気軽にご参加ください。

http://peatix.com/event/268490/view

 

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