ファシリテーターのインタラクティブな情報伝達

: Posted by Yuki Anzai at May 24, 2017

最近は、経験豊富な熟練したファシリテーターと、経験の浅い初心者ファシリテーターのふるまいの違いについて調査・考察しています。熟練したファシリテーターは、多くの人が思い浮かべる通り、参加者とのインタラクションを重視します。一方的に情報を伝達するのではなく、ときに参加者に問いかけたり、話題を振りながら、意見を拾い上げながらプログラムを進行します。


では、参加者に話しかけて、意見を求めれば、すなわち”インタラクティブなファシリテーション”なのかといえば、そうではないような気がします。実際に、初心者が見よう見まねで「皆さんはどう思いますか?Aさん、いかがですか?なるほど、ありがとうございます。」と“インタラクション”をとっても、どこか予定調和的な、一方通行的なベクトルが抜けない場合が多いです。

 

熟練したファシリテーターのインタラクションは、直接的なやりとりにあるのではなく、「場の観察・反応の確認・進行に反映」という認知過程にあるように感じています。わかりにくいので、極端な例を挙げます。たとえば、自己紹介シートを使ってアイスブレイクをする場面を想像します。ファシリテーターは「これから自己紹介をするので、マーカーで自己紹介シートに5分程度で記入してください」などと、指示を伝達する必要があります。

 

初心者の教示の様子を観察していると、教示のあいだに意識のフォーカスが「伝達すべき情報」に向いていて、参加者をほとんど観察していない場合が多いと感じます。その結果、太字のマーカーではなく、自前の細字のボールペンを使って記入する参加者がちらほら現れて、結果的に「読みにくい自己紹介シート」ができあがってしまう、などの情報伝達漏れによる「プチトラブル」が起こります。

 

他方で、熟練者は「これから自己紹介をするので、」と述べる間に、参加者の様子を観察し、参加者が進行に同意していること(違和感を感じている人がいないかどうか)を確認します。そのまま「1人1本、マーカーを1本お取りください」などと指示を続けながらも、参加者の様子を観察し、参加者がテーブルの水性マーカーセットから1人1本取り出しているかどうかを確認します。もし指示を聞いていなくて取り出していない参加者がいれば、「ボールペンだと、他の人からシートが見えにくいので、テーブルのマーカーを使ってくださいね」と補足をするなど、その場で進行方法を修正するはずです。そして、問題なさそうであれば「自己紹介シートに..」と教示を続ける。

 

以上は極端な例ですが、一方的に情報を伝達しているように見える場面においても、熟練したファシリテーターは常に場を観察し、参加者の反応を確認しながら、そのフィードバックを進行に反映しています。直接の会話のキャッチボールも重要ですが、このようなミクロな情報のやりとりのなかに、インタラクティブなファシリテーションの真髄がありそうです。

 

 

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